1937年創業のニユートーキヨー様は、日本にビヤホール文化を広めてこられた老舗です。東京駅構内にもいち早く店舗を構え、多くの人々に親しまれてきました。そして2025年夏、長年愛されてきた東京駅八重洲口の店舗が、装いも新たに生まれ変わることに。私たちがまず取り組んだのは、東京駅とニユートーキヨー様が重ねてきたそれぞれの歴史を、丁寧にひも解くことでした。
過去と未来、そして今を繋ぐビヤホール
1914年に開業した東京駅は、日本の近代化を象徴するターミナルとして、数々の歴史を刻んできました。今回の設計では、煉瓦造りやアーチ構造といった東京駅の歴史を感じさせる要素を随所に取り入れ、それらを現代的な感性と融合させて空間全体をかたちづくっています。 テーマは「トラディショナル・ビヤホール today」。どの世代にも新鮮に映りながら、どこか懐かしさを覚える空間に。過去と未来が交わり、場に独特の空気を生み出しています。
その象徴として店舗の中心に据えたのが、古い電車をモチーフにした円形カウンター席。車両のような曲面を帯びたフォルムに、窓枠を思わせる丸みのある意匠とレトロな球体照明を設え、カウンターはステンレスとスチールで作製しました。クラシックな趣のなかに近未来を感じさせる空気が漂い、懐かしさと未来感が共存する仕上がりに。何年経っても、いつ見ても、未来から見てもかっこいい──そんなデザインを目指しました。
空間に、時を刻む写真の記憶
店内に足を踏み入れ、ふと見上げると目に入る昔日の景色。ニユートーキヨー様よりお預かりした膨大なアーカイブの中から選んだかつての本店ビルの記録写真をクロスに加工し、エントランス側の天井に設えました。戦前に撮影されたとみられるその一枚には、当時の様子が生き生きと映し出され、空間に深みを添えています。
駅舎と車両をモチーフにした、居心地のデザイン
快適さを追求したテーブル席。背面には味わいのある木枠と磨りガラス調の窓をデザイン。レンガのアーチと窓のエイジング加工が古い駅舎を思わせます。椅子にはゆったりとしたサイズ感と座り心地を重視し、長くくつろげる環境を整えました。
ソファー席は古い電車のボックス席をイメージ。向かい合うレイアウトや背もたれの高さなど、空間を区切りながらも開かれた雰囲気が漂い、にぎやかさと居心地のよさを両立させています。
東京駅という特別な現場で、すべてを形にするために
東京駅という公共性の高い場での施工には、設計・施工の両面で高い精度が求められました。営業を続けながらの夜間工事に加え、資材の搬入だけで一晩を要することも。駅構内の設備は重装かつ特殊であり、施設側との綿密な調整も欠かせません。そのため設計段階では、過去最多の図面を描き上げ、構造や動線、納まりに至るまで細かく検討を重ねました。
「任せてよかった」──その言葉の重み
本プロジェクトでは、デザインから施工まで一貫してお任せいただきました。完成後には「任せてよかった」とのお言葉も頂戴し、東京駅という特別な環境で実現できたことを、私たちとしても嬉しく感じています。“古くてかっこいい”だけでなく、“未来に見てもかっこいい”。時代を超えて人々が行き交う東京駅という場にふさわしい、新しいビヤホールをかたちにすることができたと思います。

DETAIL
店舗詳細
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DATA
店舗情報
- 店名
- ニユートーキヨー ビヤホール 東京駅八重洲口店
- 住所
- 東京都千代田区丸の内1-9-1 東京駅一番街 B1F
- Web
- https://shop.newtokyo.co.jp/newtokyo/yaesu/
- 広さ
- 75.95坪
- 竣工
- 2025年6月