
海のそばに広がる、千葉・幕張の開発エリア、幕張ベイパーク。きれいに整った街並みに、フレンチブルーが映えるパティスリー「Craquelin」。オーナーご夫婦が若いころから大切に育ててきたお店です。これまで点在していたお店を一つにまとめて、このベイエリアで新しい一歩を踏み出しました。
“好き”からはじまる空間づくり
「フランスが大好きなんです」と笑顔で話す奥様は、何度も現地を訪れて写真を集めたりと、イメージの断片をたくさんお持ちでした。そのひとつひとつをどう空間に落とし込むか。 全体のトーンから細部のあしらい、動線の使い勝手まで、ヒアリングを重ねて少しずつ丁寧にかたちにしていきました。

デザイナーはイメージを何度もスケッチに描き起こし、奥様もスケッチを描かれ、話して、描いて、また話して。造作家具は数センチ単位で調整を重ねました。なかでも陳列什器は、お菓子の表情や動線とのバランスを何度も試しながら、“ここだ”と思える配置を探りました。
Craquelinらしさを、大人の色でそっと描いて
長年「Craquelin」を象徴してきた水色に、少しだけ落ち着いたトーンをプラス。若さの軽やかさから、大人の静けさへ。一歩先へ進んだ今の「Craquelin」を色で表現しました。
ブロカントの風合いが心地よさを生む
店内はパリのパティスリーをイメージして、整いすぎずどこか手のぬくもりを感じるブロカントの要素を散りばめました。新しく整備された街のなかで、丁寧に時間を積み重ねてきたような“歴史ある手作り感”を演出しています。

ショーケース横の壁面に描いたサイン。刷毛で描いたようなペイントの一部を、あえて少しかすれさせて手描きのようなゆらぎを表現。整った文字ではなく人の気配がにじむ線に。この空間によく似合います。

店内の壁に飾られているのは、オーナーご夫婦が長年集めてきたフランスの陶器「フェーブ」。ガレット・デ・ロワというフランス伝統菓子にひとつだけ入れられる、小さな幸せのお守りです。既存店では飾る場所がなく、今回の移転に合わせて飾るためのスペースをあらかじめ計画しました。足を止めて「かわいいね」と話すお客様の姿も。思いのこもったものがあると空間が柔らかくなり、人との距離も自然と近づいていきます。
美味しさをつくる場所にも、愛をこめて
忘れてはならないのが厨房。これまで使ってきた機材を活かしつつ、新しい設備も組み込んで、作業がスムーズにできるようにレイアウト。

店内に差し込む光のそばにある、木枠の小さなガラス窓。くもりガラスとゆらぎのある型板ガラスを組み合わせて、厨房の気配がほんのり感じられるようにしました。ロゴマークがくもりガラスにやさしく浮かびます。

現地はガラス張りのファサードが特徴の商業施設の1階。外壁のデザインに制限がある分、“外からどう見せるか”が鍵でした。「Craquelin」の水色が光を受けて浮かび上がり、通りすがる人々の視線を引き寄せます。
きらびやかすぎず、ほんの少しの特別さをまとったパティスリー。「Craquelin」の新たなスタートに相応しい空間になりました。

DETAIL
店舗詳細
STORE
DATA
店舗情報
- 店名
- Craquelin
- 住所
- 千葉市美浜区若葉3-1-39 幕張ベイパーク ミッドスクエアプレイス
- Web
- https://cpf-craquelin.com/
- 広さ
- 39.83 坪
- 竣工
- 2024年5月