神楽坂の路地裏にひっそりと佇む「124. KAGURAZAKA」。外階段を上がると、街の喧騒からすっと切り離された静かな空間。焼き場の所作や一串一串の仕上がりを臨場感たっぷりに味わうことができます。
粘り強さが巡り合わせた理想の地・神楽坂
最初にご相談をいただいたのは2021年11月。そこから、目黒、恵比寿、代官山など、都内のさまざまなエリアを一緒に歩き、数えきれないほどの物件を見て回りました。
けれど、どこか決め手に欠け、「ここだ」と思える場所にはなかなか出会えず。最後に辿り着いたのが、この神楽坂の物件でした。立地、建物の雰囲気、スケール感。すべてが理想とぴたりと重なり、この場所に決めてからはすべてがスムーズに進んでいきました。
光で照らすのではなく、浮かび上がらせる
この空間づくりの根底にあるのは、料理と同じく、余計なものを削ぎ落とし、引き出したい本質だけを際立たせるという考え方です。黒いカウンターは、料理を際立たせる背景として機能し、厨房では、料理人の所作が光の中で浮かび上がります。見せたいものだけを残す。その選択が、この空間の芯をかたちづくっています。
カウンター上部には木材と黄土色を使い、ライトアップされるとやわらかな黄金色に染まります。カウンターはマットな黒で仕上げ、陰影が生む立体感を感じられる空間に仕上げました。
エアコンの配管や排気設備など、低い天井高の中でどうしても視界に入りがちな要素は、徹底してすっきりと納めました。焼き場の排気はフードを使わず下引きにし、垂れ壁の裏にステンレスを隠しました。余計なものを削ぎ落とすことで、カウンターに立つ料理人の所作が際立ち、一皿が仕上がるまでの臨場感を遮るものなく味わえます。
厨房上部は成型で整え、光の当たる位置には左官仕上げやタイルを選定。棚に並ぶグラスは、照明の演出によって美しく輝き、店内で目に入るすべての要素が“魅せたい”世界観に沿って一つひとつ選び抜かれています。
静かに光がこぼれる入り口ドアのサイン。鉄板に切り抜かれた文字から店内の灯りが柔らかく浮かびます。
世界に選ばれた味と空間
「124. KAGURAZAKA」は、開業から間もなくしてミシュランガイド東京に掲載され、世界の名店の仲間入りを果たしました。世界に選ばれた味。それを空間づくりでお手伝いできたことが何よりの喜びとなりました。

DETAIL
店舗詳細
STORE
DATA
店舗情報
- 店名
- 124. KAGURAZAKA
- 住所
- 東京都新宿区若宮町12-4 フィルパーク神楽坂若宮 3F
- Web
- https://124-kagurazaka.com/
- 広さ
- 11.8坪
- 竣工
- 2023年8月