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個店を10店舗にする方法[vol.04] 投下資本回収編2(投資回収年度を考える)

update :

『個店を10店舗にする方法』シリーズ、「個店を10店舗にする方法[vol.03] 投下資本回収編1(単月黒字化を考える)」の続きです。
(前回記事はこちら:個店を10店舗にする方法[vol.03] 投下資本回収編1(単月黒字化を考える)

まずはおさらいです。
筆者の想定店舗「地域の人々に永く愛されるカフェレストラン(仮定)」は月々350万円の売上を想定し、計画通りにいけば単月黒字化する予定となっています。

客単価・回転数・充足率などの売上を構成する要素に関しては「個店を10店舗にする方法[vol.02] 売上予測の考え方」にて規定し、賃料・人件費・材料費などの店舗を運営・維持していくための経費「個店を10店舗にする方法[vol.03] 投下資本回収編1(単月黒字化を考える)」にて規定しています。

前回は、筆者が初期投資額をどの様にして(または幾ら位を工事費として掛けたらよいのかを)想定し、それを何年で回収するかという話で終わっていましたので、今回はそこから考えてみましょう。

初期投資の目安の考え方

まず筆者の考え方とは別として、巷で言われている工事費の目安や初期投資額の目安をネット先生で検索してみました。
するとざっと以下の様な記載がありましたので、サラッとご紹介すると・・・

A「初期投資の目安は3年回収できる額に抑える」
B「開業資金は年商の5割程度とするのが良い」
C「開業資金は1坪あたり100万円を目安にする」
D「内装工事費用は20~50万円/坪を目安とする」
E「初期投資は1坪あたり30万円以下を目指す」
F「初期投資は月商の3ヶ月を目安とする」
G「初期投資許容額は年商の40~50%」

などなど枚挙に暇がないほど数多くの諸説が検索できます。

これを筆者の想定店舗に当てはめてみましょう。
Aの場合「1548万」
Bの場合「2100万」但し開業資金なので運転資金も含むと思われる。
Cの場合「1500万」但し開業資金なので運転資金も含むと思われる。
Dの場合「300万~750万」但し内装工事費のみ
Eの場合「450万以下」
Fの場合「1050万」
Gの場合「1680万~2100万」

と思った通りバラバラです。これではどの意見を参考にしたら良いか迷ってしまいますし、何が正しいのかも分かりません。

それもそのはずです。
これらの数値は全て机上の数値計算とそれぞれの書き手の収支計画的分析から算出された数値で、実際の事業形態や、実際にその店舗に訪れるお客様の状況やシーンを全く考慮していないケースがほとんどだからです。

つまり上記の様な数値は、客単価がいくらで回転数がいくらで、お客様は家族連れやカップルの比率が高くて・・・など、実際にその店舗が立ち上がった場合の運営形態を少しもイメージしていない、ただの数字合わせの数値と言えるでしょう。

当社に開業相談にいらっしゃるお客様の中にも時々「工事費は出来る限り安く」と仰られる方がいらっしゃいます。
当然、これから新規に出店し新しい事業で勝負を掛けようとされているお客様ですから、その気持ちは十分に理解できますし、経営的観点に沿ってみても初期投資を極力抑える事はあながち間違いではありません。
ですが、それは目指される業態やその店舗にいらっしゃるお客様層やその店の在り方によって規定されるべきではないでしょうか?

必要な初期投資をシミュレーションしてみよう

筆者の「地域の人々に永く愛されるカフェレストラン(仮定)」で具体的に検証してみましょう。

筆者の「地域の人々に永く愛されるカフェレストラン(仮定)」は売上想定をおこなった際「回転数」を設定しました。
その設定値は、土日のランチタイムと金土のディナータイムを除いて、回転数は「2」と設定しています。
ランチタイムは11~15時の4時間、ディナータイムは17~23時の6時間なので、大抵の場合、ランチなら4時間で2回転、ディナーなら6時間で2回転してくれれば良いという考え方です。
これはすなわち、いらっしゃったお客様に2~3時間位はゆっくりとお食事の時間を楽しんでもらいたいと言い換えられるかもしれません。

そのような、ある種贅沢に時間を使ってもらいたい店舗のつくりが「極力初期投資を抑える」という一般的な経営指針に沿って安普請なつくりや雰囲気で良いのでしょうか?
私が経営者であればそれを良しとせず、店舗コンセプトに沿った店づくりを全うし、お客様にまた訪れて頂けるような店舗づくりを目指すでしょう。

同様に、「客単価」からの考察も必要です。
筆者の「地域の人々に永く愛されるカフェレストラン(仮定)」では、ランチは1,000円、ディナーは3,000円と設定しています。
ディナーの単価3000円は、一般の大衆居酒屋と比べて若干高めと言えるでしょう。

具体的には、1人当たり<ビール1杯+グラスワイン2杯+500円の前菜+1,000円のメイン料理>位のイメージで、女性のお客様2人組であれば料理もシェアするでしょうし、なかなか満足度の高いディナーになるのではないでしょうか?

女性二人組はもちろん、カップルのお客様にも楽しんで頂けそうな料理と時間を提供する我がレストランは、やっぱりその雰囲気や居心地も大切にしていきたいので、それを作り上げる工事費用はある程度必要です。
いくら安く作りたいからと言って、座り心地の悪いイスや空調の効かないホールは以ての外で、普段とは少しだけ違う「非日常」を楽しんで頂く事が必要だと考えます。

ここまでを踏まえ、必要な初期投資額を具体的にシミュレーションしてみます。

◎内装費(設備費)・厨房機器費
そこで筆者は一流レストランほどとは行かないまでも、来ていただいたお客様が、お支払い頂いた額に見合う様な満足感を得られる料理と時間と空間を提供するためには、一般的にはやや高めの1坪当たり80万、15坪で1200万の工事費を投資しようと考えます。(但しデザイン費含む)
また厨房機器についても、シェフの今までの経験や業を存分に活かす事が、ひいてはお客様のためと考え300万円を投資する事とします。

◎その他費用
店舗出店における大きな費用としての工事費は上記で計上できました。ただ出店においては、工事費以外にも色々な支出が発生します。
以下、筆者の想定店舗における工事費以外の支出の種類とその想定金額を挙げてみます。

・店内ディスプレイ費用:¥100,000(筆者のこだわりのアイテムなど飾りたい)
・厨房小物      :¥200,000(鍋、フライパン、包丁などの調理道具)
・食器        :¥300,000(お客様に提供する料理用器やグラス類)
・事務機器      :¥150,000(店舗を運営していく上で必要な事務機器)
・ユニフォーム    :¥100,000(コックコートやアルバイト用ユニフォーム)
・予備費       :¥100,000
・開業前賃料     :¥345,000(工事期間や準備期間に発生する賃料。ここではフリーレントを考慮して1か月分を想定)
・開業前食材費    :¥100,000(開業前のメニュー開発や準備に伴う食材費)
・開業前広告宣伝費  :¥100,000(開業を告知するビラや折り込み費)
・アルバイト募集広告費:¥100,000(アルバイト募集費)
計¥1,595,000

上記工事費とその他費用に消費税分考慮し、物件の保証金¥2,070,000(賃料の6ヶ月で想定)を加えた金額が、今回の初期投資総額となります。

初期投資総額 ¥19,494,750

回収期間を算出してみよう

さて、問題はこの初期投資がどの位の期間で回収できるかですが、結論から申し上げると4年で回収できる計画です。

回収年度については借入金額に応じた金利や再投資率なども計算に入ってきて、厳密には以下の様な詳細なシミュレーションを必要としますが、

ザックリ言うと、前回の「個店を10店舗にする方法~投下資本回収編1(単月黒字化を考える)」で、「店舗の金庫には毎月¥500,000弱のキャッシュが残る計算となり、ここから初期投資分を返済(回収)していくという考え方になります」という記載をしておりますので、

¥19,494,750÷¥480,000=40.6ヶ月

となることから、4年目途中で投資回収できる見込みとなり、事業的にも健全な計画と言えるでしょう。

大事なのはバランス

ながながと3回に渡り、収支計算や店舗単月黒字化、初期投資回収について筆者の想定する店舗を通じてお話をしてきましたが、まとめると

「店舗経営は事業であり、最終的に儲かる(初期投資を回収できる)必要がある事は当然として、その上でその店舗に訪れるお客様が喜んで頂けるような業態や店舗運営、店づくりが重要だという事。そのためには一つの情報や条件に囚われず、各要素のバランスが非常に大事である」という事です。

ロケーションや地域にこだわりすぎて、想定を超える賃料の場所を選んだり、利益を求める故に食材費や人件費を絞り過ぎたり、初期投資を抑える事を重視して、想定している業態の客単価や回転率を無視した空間づくりをしたりすると、その歪みは必ずお客様の声となって返ってきます。

大切なのは、今まで大切にしてきたご自身の夢である店舗をバランス良く、全ての事項を考慮した上で出店し、その結果利益を上げ、投資を回収し、お客様に喜んで頂く事ではないでしょうか?

当社では上記の様な全ての検討すべき事柄に関して、深い知識と経験をもったスタッフがおります。
ご出店の際は、デザイン・施工以外に関してもお力になれると自負しておりますので、お気軽にご相談頂ければ幸いです。

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「個店を10店舗にする方法」シリーズ
個店を10店舗にする方法[vol.01] 物件の選び方と家賃編
個店を10店舗にする方法[vol.02] 売上予測の考え方編
個店を10店舗にする方法[vol.03] 投下資本回収編1(単月黒字化を考える)
個店を10店舗にする方法vol.04 投下資本回収編2(投資回収年度を考える)
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