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CASE STUDY ケーススタディ

“日本一行列のできるお店”のつくり方

海老昌

“日本一行列のできるお店”のつくり方

待ち時間、なんと「3時間34分21秒」。2017年の春、人気情報番組スマステの「番組史上一番並んだ!最新行列グルメ!待ち時間ランキングベスト10」で堂々の1位を獲得したのが、渋谷の海老フライ専門店「海老昌」さんです。

渋谷で出店を目指し、渋谷の街を3年掛けて徹底リサーチをして出店を決めたという円山町・道玄坂エリア。元々はサラリーマンの抜け道であることに注目し、ビジネスマンをターゲットにしていたそうですが、まず足を運んでくれるようになったのは、「本当に美味しいものが割安な価格で食べられる、おもしろい店がある」と聞きつけた、近くの松涛エリアに住まう富裕層の方々だったそうです。
そこからグルメ人たちに口コミが広がり、芸能界一のグルメ王として知られるアンジャッシュ渡部氏にもおすすめのお店として紹介され、瞬く間に日本一行列のできる人気店へ。オープンから約2年が経つ今も、連日予約で埋まる人気を集めています。
東京都内だけでも8万件以上ある飲食店のなかでナンバーワンを獲得するに至ったのは、“海老フライ専門店”という特異な業態であるだけでなく、お店づくりをする中でオーナーが徹底した”こだわり”を追求したことも大きな理由でしょう。モノトーンの空間、ジャズの流れる店内、白いシェフコートをまとってのカウンター越しの接客ー。お店づくりにおける”こだわり”について、オーナーである小杉様にお話を伺いました。


明確なビジョンとプラスの誤差

ー 今春以降、各種メディアで大きな話題になり、いまや行列と予約が絶えない人気店となっています。
そのようなお店になるには、料理、サービス、空間、経営などそれぞれの面ではっきりとしたビジョンをお持ちだったのではないかと思います。最初に当社へご相談をいただいてから実際にお店がオープンするまで比較的時間を要しましたが、はじめの時点からそれぞれ完成に向けて見えているものは明確だったのですか?


(小杉様)そうですね。ただ、料理もサービスも空間も、いま目指している形にはまだまだ追いついてないなと感じています。僕にとって大事な要素である「サービス」には一番力を入れたいと思っていて、「こうしないといけない」というものは明確に見えているんですけど、まだ遠く離れていますね。料理については、見えていたものよりもっと複雑だと分かった部分もあります。

ー 料理以外でも、お店を実際にスタートされてから思い描いていたものとの誤差が見えてきた部分はたくさんありましたか?

ありますけど、うちの場合は逆によい誤差だったなと思っています。お店自体にしても、わざとB級にちょっとだけ毛が生えたものをつくったつもりが、予想を超えてお客様がよい評価をしてくださって”高級店”というイメージができあがってきたので。自分自身、どちらかというと高級な部類に入るフレンチでの経験があるので、高級なお店の方が好きだし、やりやすい。B級のつもりでスタートしたけれど、お客様がそっちへ導いてくれたので「ああ、高級路線でもいいんだな。じゃあやっちゃおう!」と。
だから空間もあえてB級なイメージでつくったところがあったので、当初の「明確」からは今はいい意味で外れた感じです。

ただ、経営面に関してはかなり明確かつ想定の通りだったとは思います。メディアを使って早く火がつくように仕掛けた部分です。全てが成功というわけではなく、失敗したなと思う部分ももちろんありますけど。

そのお店にとって必要な条件

ー お店を開業するにあたって、「人通りが多い場所であること」や「地下や2階ではなく1階であること」、「階段とエレベーターが両方あること」、「家賃は出来るだけ抑えた場所であること」など、大きな失敗を避けるための、いわゆる”飲食店開業セオリー”とは相反する条件で出店をなさっているなと感じたのですが、そのあたりはどうお考えだったのでしょうか?

実はこの物件に来るまでに5件ほど断られているんですね。もともと渋谷で店を開きたいと思っていて、ビール会社の営業として渋谷を回っていたんですが、営業先のお店の方々からいろいろな物件情報はもらっていました。「どこどこの店が今度空くよ」とか、「次、小杉さんに譲るよ」とか。けれど、いざ入札となると、決めるのは結局ビルのオーナーさん。僕の100万と、有名チェーン店の100万、どっちを取るかというと・・・。
そんな中で借りられる可能性があったのがここだったんです。方々との調整含め、もうここでやらなければという時期でもあったので、そういう環境や条件も自分を後押ししました。ギャンブルではありましたが、「やらないことには成功もない」と。

実はこの地下1階とセットで1階も借りていて、最初は1階で設計を頼んだこともありました。セオリーに従うなら路面店(1階)でやるべきだったのでしょうけど、実際のところ路面店でやっていたらここまでになっていたかどうか分かりません。ここは地下で隠れ家的な雰囲気がいいんです。人通りもそれほどないように見えますが、ここまで人も歩いてきてくれますし。東急本店が目の前だから、電話でも1回で道案内ができます。だから、立地に関してもぎりぎり要件を満たしているかなと。

このお店は、今でこそ取材を受けたり、たくさんのお客様がいらして「おいしい」と評価してもらえていますが、当初はまわりから「海老フライ?」と笑われていました。だけど僕は気にしていなかったし、ちゃんとやればお客様は来る、という想いがあった。
よく「よほど自信があったんですね」と言われますが、失敗することとかそんなに考えていないですね。それを考えたら何もできないじゃないですか。

お客様にとっての当たり前

僕は実家が地元でも有名なフレンチのお店だったこともあって、食育は厳しかったと思います。母親は今もファーストフードを食べたことがありませんし、僕がケンタッキーを食べたのもつい最近のこと。家ではドレッシングも禁止でした。おいしいものを食べさせてもらったことはありがたいですけど、それ以上にありがたいなと思うのは、小さな頃から目の前で商売を見せてもらったことですね。おいしくてお金になるもの、おいしくてもお金にならないもの、といった商売感覚を自然と養えたことが、今の自分にとって一番大きいと思います。

でも、そういう”感覚”って目に見えるものじゃないので、なかなか従業員には伝わらない。だけど、お客様には伝わるんですよね。
例えば、さきほど少し高級な路線でお店をつくっていきたいという話をしましたが、今いらっしゃるお客様もそのレベルの感覚をお持ちの方々です。そうした方々にとって、テーブルの上に塩・胡椒・紙ナプキンがきちんと等間隔に並んでいることって、「いいね」じゃなくて、「それで当たり前」なんです。それを踏まえての料理の値段でもあるわけで。お店の世界観やサービスをつくるには、そうしたポイントが一つ欠けてもダメなんですが、そこの感覚を従業員と共有するのが難しいですね。


ー ということは、お店をやる上でのこだわりは、意識してのものというよりも、今までの経験から培った感覚との違和感から自然と出てくるものということでしょうか?

違和感というか、「こうしなきゃいけないでしょう」という感じですね。物を拾ったら手を洗うのと同じです。いくら忙しくても手抜きはしない。自分で選んだ飲食の仕事で手抜きやズルをするくらいなら、他の商売をしたほうがいいと思っています。それくらい「食」にはこだわってきたし、偉そうに言ってきたので、その分はきちんとしなければなりません。どんな仕事に於いても同じだと思いますが、自分がプライドを持ってやっていることに嘘をついてはいけないんです。
おいしいものを提供するのは飲食のプロとして当たり前。そうやって厳しくすると従業員が集まりにくいんですが、それで店が潰れるなら潰れてもいいかなと思っています。妥協までして、自分の思っていないことやっても格好悪いじゃないですか。

ただ、こだわりすぎて商売に向いていないんじゃないかとか、そのくらい目をつぶっていればいいのになと自分でも思うときはありますね。

今後の展開について

ー 最近では新宿高島屋さんからのオファーで海老フライを販売したりと、お店を飛び出しての展開も始まったようですね。

僕は最終的には空港に出店したいんです。そのために今具体的に何かしているわけではないんですけど。
まだビール会社に勤めていた頃、関空に到着したロビーにそのビール会社の名前がドーンと出ていたのを見て「すごいな」と思ったことがあって。空港に自社や自店の名前があるって単純に誇らしいですよね。それに飛行機に乗る人って、旅行目的の方が多いこともあって、いいベクトルの気持ちや雰囲気を持っているじゃないですか。そうした方々に来ていただけるお店をやりたいなと思うんです。ホテルのようなサービスを求めている方は、自分の得意分野だとも思いますし。

実はいま大型商業施設への出店もお声掛けいただいていて、チャレンジしてみようかなと検討しています。空港に出店するまでに必要ないくつかのステップのひとつとして、やってみなければならないなと。そのためには、もっとエッジの効いた商品を出さなければいけませんね。


ー 今後はどのような展開をお考えですか?

少し先のことで言えば、次はラーメン屋をやりたいですね。スープも「絶対にいける!」というものがあるし、このお店よりも明確なビジョンと自信があります。

海老フライに関しては、まだまだ自分のつくりたい海老フライに向かって全力で取り組んでいる状態です。いかにしておいしい海老フライを揚げるかを試行錯誤するのが楽しいんです。とにかく味も見た目も洗練された海老フライがつくりたいですね。本当に作品をつくっている感じかもしれません。
営業スタイルにしても、夜は今より少し客数を抑えて、その分もっと上質な料理とサービスを提供できるようにしたいと思っています。そのためには福利厚生を厚くしていい社員を雇い入れることも重要ですし、自分自身ももっとしっかりしなければなりません。

一歩前に進むと次々に新しい目標ができて、いつまでも届かなくて・・・そんな感じかもしれません。だから、目標を一つ一つ達成していって、それを繰り返して進むしかありません。
クロノバさんに「ぜひ次もお店つくらせてください!」って言われるようにならないとですね。


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PORTFOLIO 実績紹介 海老昌
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店名 海老昌
住所 東京都渋谷区道玄坂2-22-6 クレア道玄坂B1F
Web http://ebimasa.com/
広さ 25.07m2 / 7.73坪 竣工 2016年

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